2024.10.21

指勘(さしかん)建具工芸 三代目 黒田 裕次さん

三重県菰野町にある「指勘(さしかん)建具工芸」。
「指勘建具工芸」では組子(くみこ)という木を組み合わせる伝統技法を使い、建具などを制作しています。
そこで三代目を務めているのは、組子建具職人の黒田裕次さん。
職人である黒田さんがかもしかビレッジをはじめ、周囲と関わることでどのように変化してきたのかお話をお伺いしました。

 

こもガクの工場見学で組子の説明をする黒田さん

 

異業種の方と関わることで、自分たちを客観視できるように

山口陶器と色々な場面で関わって頂いる黒田さんですが、
関わる前と後でどんな心境の変化がありましたか?

以前は、基本的には自分たちのモノづくりを客観視することができておらず、作るものも単独でしか見ることができてませんでした。それが、異業種の方と関わることによってもっと自分たちを客観的に見ることができるようになり、自分たちはどう見られているのか?というお客さんの声をもっと聞きたくなりました。また、異業種の方達の中での自分たちの立ち位置も考えるようになり、いかに自分たちのことをお客さんに伝えるかの重要性がわかるようになりました。最近には、お客さんの為に何ができるか?ということまで考えることができるようになってきたと思っています。

 

以前は「こもガク」などまちづくりには関わってはいませんでしたが、最近は積極的に参加していますね。黒田さんの中で何か心境の変化があったのでしょうか?

そうですね。

新潟の燕三条で行われている「工場の祭典」というイベントに出展者として参加した際に、自分たちのワークショップをとても評価して頂いた経験があって。地元の「こもガク」で出展した時には、評価されている実感がなかったのですが、地元以外では高く評価してもらった経験から、どうやったら地元の人に向けて、より自分達を表現できるか?という視点に切り替わりました。それでもまだ、「こもガク」という場所で自分をいかに表現できるか、までしか考えられていなかったのが最初の頃でしたね。

 

「こもガク」に実際に参加してみてどうでしたか?

黒田さんが手がけた組子細工の作品

 

こもガクは、はじめは自分の表現ができる一つの場所として考えていました。
実際に参加してみると、自分たちの業界以外の人達の表現方法が見れるので、自分たちはどうやって学んだことを取りいれようかなと考えるようになりましたね。全然違う分野で和菓子を作っている方や、料理教室の方がどうやってお客さんと話をしているのかを聞くことで、よりお客さんの気持ちになることができました。業界の専門用語など分からない言葉をなるべく使わないようにすることや、もっとわかりやすくできないか?と考えるようになったのはこもガクでの大きな収穫だと思っています。

こもガクへの参加を通して、広がった地域への関わり

こもガクの参加から、さらに動きがあったりしましたか?

参加者というだけでなく、実行委員としてこもガクの運営に関わるようになりました。
2020年には実行委員長もさせて頂きました。しかし、そのタイミングでコロナがきたんですよね。

その時は「もう開催できないかな」と勝手に頭の中で思ってしまいました。

 

実行委員長だったにもかかわらず、開催できないかもと思ったのですか?
苦笑(笑)
コロナ禍で実行委員に加わるのが難しかったり、やめていく人もいましたが、残ったメンバーで今何ができるかを話し合って、結果オンライン開催しました。その経験は、信念を持ってやり続けること、なんのためにこれをするのかということを、すごく考えさせられました。最初はコロナ禍でなぜやらないといけないのか?というのをすごく考えていましたが、周りのみんなが「開催する!」と踏み切ってくれたおかげで、自分も開催することしか考えなくなった。やめるとは考えなくなったのがよかったです。
そういう風に実行委員のみんなに後押ししてもらったおかげで、どんな苦境でもがんばること、意思を通すことの重要性を知った気がしますね。

 

最初は自分のことをどう表現できるか考えていたけれど、みんなと活動することによってちょっとずつ変わっていった感じなんですね。それで今は、かもしかビレッジの村人になって活動にも参加している。そこはまた何か変化があったんですか?

ビレッジのメンバーは本当に多種多様です。その中で自分が何ができるか、自分ができることは少ないし、ちっちゃいことしかないけれど出来る事は、出来る範囲でやろうという意識でいます。みんなと一緒にいる中での自分をどう表現するか考えながら、他のメンバーのPRも見ているし、常に色んな人から勉強出来るので、常に取り入れること、そしてみんなを先生として、学びとしてみていますね。

 

地域のためになる活動として、かもしかビレッジや山口村の活動があると思います。そういう視点でみた時に「僕はこうしていきたい」などありますか?

正直自分に何が出来るかはまだわかっていない状況ではありますが、みんなで活動は続けていける状態でありたいなと思いますね。
自分もみんなも健全経営しながら、自分たちのためにやっていることが回り回って地域のためだったとか、山口村を通して僕らの仕事を子供達が将来継いでみたいなって思えるような職業の一つになれたらなと思います。最終的には自分に帰ってくるということだと思うんですけど、自分の為がみんなの為になって、みんなの為が自分の為になれるのがいいかなと思いますね。

ありがとうございます。では最後に皆さんにメッセージを一言!

皆さん、かもしかビレッジ、楽しいです!
毎月第3日曜日これからもやっているので
ぜひぜひ遊びに来てください!!

黒田 裕次(くろだ・ゆうじ)

一級技能士

1976年、三重県生まれ。指勘建具工芸、3代目。建具・組子職人。三重県建具作品展示会 第30回三重県知事賞受賞、全国建具作品展示会 第50回内閣総理大臣賞受賞ほか多数受賞。